紅い石段

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―夕方、カイダン神社の石段を三人で手をつないで登り、てっぺんに 着いた時に手を離すと、真ん中の子が神隠しに遭う― ぼくの田舎の子ども達の間で流行っていた怪談話だ。 カイダン神社というのは、ぼくの家から歩いて二十分程の所にある小 さな丘の上にある古い神社のことで、本殿に行くまでに五十段の長い 石段が続いている。 正式な名前なんて子どもは分からないから、「階段」と「怪談」に ちなんでそんな風に呼ばれていたのだ。 どこの誰が言い出したのかは知らない。 でも、村の子どもはみんな知っていて、昼間でも本殿に行こうとはし なかった。 知らないのは、都会から来たガンちゃんだけだった。 ガンチャンは、毎年夏になるとおとうさんの親戚に連れられて、 周りを山に囲まれたぼくらの村にやってきた。 都会育ちで、ぼくより一つ年下で背も小さいのに、 すごく乱暴者でわがままだった。 気に入らないことがあればすぐに大きな声を出して、 自分のおかあさんに泣きつく。 そうすると、吊り上がった目をしたガンちゃんのおかあさんは他のお となの見ていない場所にぼくを連れて行き、タバコくさい息でぼくを どなり散らすのだ。 隣に住んでいたはるちゃんは、ぼく以上のヒガイシャだった。 長いかみの毛を引っ張られたり、おめかしを壊されたりして、 いつもいつも泣かされていた。
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