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ガンちゃんが出しゃばって足を先に出し、五十段目を思いっきりふんだ。
「やった! てっぺんや!」
ガンちゃんが嬉しそうな叫び声を挙げると同時に、はるちゃんがガン
ちゃんの右手をパッとはなした。
少し遅れて、ぼくも左手をはなした。
ガンちゃんはふらっと体勢を崩して、そのまま後ろへ倒れた。
かたい石に何度もぶつかりながら転がり落ちていく小さなからだ。
ぼくはただ、呆然と見ていた。
ガンちゃんは死んだ。
おとな達の質問に対して、ぼくは泣いてばかりでロクに答えることが
できなかったけど、はるちゃんはウソをついた。
「ガンちゃんが勝手についてきて、勝手に落ちていったんや」
その時のはるちゃんは恐がりも泣きもせず、すごく落ち着いていた。
ガンちゃんのおかあさんにきたない言葉をぶつけられても、はるちゃ
んは涙一つみせなかった。
結局、子ども達の間の出来事ということであまり詮索はされず、この
ことはうやむやに済まされた。
詳しい事情はよく知らないが、元々ガンちゃん達の家族はぼくらの家
族とあまり仲が良くなかったらしく、これをきっかけにして二度と来
なくなった。
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