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それから、あっという間に年月は過ぎていった。
小学校を卒業し、中学、高校、僕と春香はいつも一緒だった。
「はるちゃん」と呼んでいた頃から、彼女に好意を抱いていた訳ではない。
だが、あの出来事をきっかけにして、お互いがお互いを必要として絶
対に離れてはならないという決まり事のようなものに、二人とも無意
識に拘束され、それが成長するに連れ強くなっていった気がする。
僕も春香も、あの神社へは二度と近づかなかった。
ガンちゃんの話を口にすることもなかった。
そして僕ら二人は、結婚することになった。
それを互いの両親に報せたとき、この村に伝わる習わしについて初め
て教えられた。
―夕方、あの神社の石段を二人で手を繋いで渡り切ること、絶対に手
を離さぬこと、さすれば、二人の将来は約束される―
おそらくあの怪談は、この話が都合のいいように組み替えられて出来
たものだったのだろう。
同時に、あの神社が鶴岡神社という名であること。
縁結びの神社であることも知った。
正直、僕は気が進まなかった。
あの事件のことを知っている親戚達も「ただの形だけのものやから、
別にやらんでもええ」と言ってくれた。
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