紅い石段

5/8
前へ
/8ページ
次へ
それから、あっという間に年月は過ぎていった。 小学校を卒業し、中学、高校、僕と春香はいつも一緒だった。 「はるちゃん」と呼んでいた頃から、彼女に好意を抱いていた訳ではない。 だが、あの出来事をきっかけにして、お互いがお互いを必要として絶 対に離れてはならないという決まり事のようなものに、二人とも無意 識に拘束され、それが成長するに連れ強くなっていった気がする。 僕も春香も、あの神社へは二度と近づかなかった。 ガンちゃんの話を口にすることもなかった。 そして僕ら二人は、結婚することになった。 それを互いの両親に報せたとき、この村に伝わる習わしについて初め て教えられた。 ―夕方、あの神社の石段を二人で手を繋いで渡り切ること、絶対に手 を離さぬこと、さすれば、二人の将来は約束される― おそらくあの怪談は、この話が都合のいいように組み替えられて出来 たものだったのだろう。 同時に、あの神社が鶴岡神社という名であること。 縁結びの神社であることも知った。 正直、僕は気が進まなかった。 あの事件のことを知っている親戚達も「ただの形だけのものやから、 別にやらんでもええ」と言ってくれた。image=484976548.jpg
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加