プロローグ

3/3
前へ
/19ページ
次へ
プロローグ 「あれが、母なる星……、地球か」 暗い一室に設けられた大型スクリーンに青と緑に彩られた星が映し出されている。スクリーンの前には、民族衣装然とした格好をした一人の男が立っていた。 映し出された星を眺める目には、羨望、嫉妬、哀愁、憤怒……様々な感情が入り混じっている。 カシャ、シュゥゥウ。 ドアがスライドする音と共に、部屋にもう一人の男が入ってくる。 「いよいよ始まるのですね。あの母なる星を、我等が手に取り戻す作戦が」 「……あぁ。我等が全ての民のために」 スクリーンを眺めていた男は、つい、と入ってきた男の方へ顔を向けた。 「では准将。作戦開始の合図を。……この作戦が我等の夜明けとなるのだ」 「ハッ!」 准将と呼ばれた男は、右手を胸の位置に強く置いて敬礼すると、踵を返して部屋を出ていった。 「…頼むぞ。例え千年かかろうとも、この“F作戦”は完遂せねばならんのだからな」 男は一人ごちる。そこへまた、別の男が入ってきた。 「総帥。準備が整いました。御足労ください」 「うむ。次は五十年後か、その時には計画は第二段階に入っているはずだろう」 男は名残惜しそうに、もう一度青い星を眺めると、振り返ることなく部屋を後にした。 ーーその日、火星近くの農業コロニー「プラント」が、正体不明の人型機動兵器に襲撃され、崩壊した。 それが、長きに渡る戦争の合図だった。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加