第一話

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「であるからにして……」 大して興味のない講義を、さも真剣に傾聴しているように見せかけながら、神座(かぐら)アオイは、学習用に用意されている学習個人端末の画面に、タッチペンで一つの単語を走り書きした。 ーーUA。 アンノウン・アーミー。A.C.0069に突如として出現し、コロニー「プラント」を破壊した謎の敵。特筆すべきは、彼らの保持する圧倒的な技術力。中でも、人型機動兵器(モビルスーツ)と呼称される兵器によって、連合軍のスペースファイター(航宙戦闘機)を圧倒し、次々とコロニーを破壊。0069から五十年経った現在でも、大した反撃ができるわけでもなく、かつて火星周辺にまで数十基あったコロニーもわずか十数基へとその数を減らしていた。 アオイは、クルクルとタッチペンを回しながら、窓の外へと視線を移した。 ……それにしても、UAは何が目的なんだ。五十年もちまちまとコロニーを破壊して。…これじゃ嬲り殺しだ。 しかし、ここ三年間はUAの襲撃はパタリと止んでいる。ニュースや連合新聞では、連合軍が三年前に多大な犠牲を払いながらも、UAの大部隊を撤退させたからだと騒ぎ立てているが、アオイには、UAの目的が変わった……、或いは、地球圏への総攻撃の準備をしているといったような嵐の前の静けさに思えてならなかった。 というのも、UAの出現パターンを算出していくと、次の標的は地球近郊のコロニー……、つまりこの「ノア」である可能性が高いのだ。 アオイ自身、自分の予測を百パーセント信じて疑わないわけではなく、むしろ信じるに値しないとさえ思っているわけだが、UAのことを考えると胸の奥が締めつけられるような、或いは頭の後ろがチリチリするような、そんな感覚に襲われるのだ。
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