しあわせの家

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タネ子は急いだ。 タクシーで自分が住んでいた町に帰ってきた。 しあわせの家の前に到着したのは23時52分。 夜中とあって、正面玄関の柵は閉められ玄関先までタクシーを乗り付けることは出来なかった。 玄関口の柵の横から人一人通れる隙間があった。 そこから上り道を辿ったらしあわせの家に着くことが出来る。 そして、近道と思われる始めにこの施設から出てきた地下廊下の入り口を見つけた。 後…6分。 この廊下を渡り階段を登れば… 何とかギリギリだけど間に合う。 タネ子の靴音だけか夜中の地下廊下に響く。 時間と共に心臓の音が忙しくなってくる。 苦しい、少しずつ歩みが遅くなって来るのが分かる。 あともう少し あと… 暗闇の中でタネ子の足音が止まる。 その時タネ子の体は細胞分裂が止まり生きる全ての機能が終わりを迎えていた。 杖を持たない体は真っ直ぐに立つことすら出来ずその場で倒れ込んだ。 灯りを持った赤い頭巾がタネ子に近づく。 「お帰りなさい。タネ子さん。 心配しましたよ…帰りが遅いので。」 「間に合ったんですか?」 赤い頭巾の女の子が倒れているタネ子を覗き込む。 「今、ちょうど時間となりました。約束通り命をもらいますね。」 明るく無邪気に笑いながら赤い頭巾の女の子が死神の鎌を降り下ろす。
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