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などととりとめのないことを考えながら駄菓子屋バーさん(妖怪バーさんとも呼ばれている)をベルを鳴らしながら追い越していく。一瞬、目が合った気がしたので軽く会釈。都会では道ですれ違っても会釈どころか、目も合わせないと聞いたけれど、本当だろうか? こんな私でも挨拶されれば返すのにと、そのときだった私の隣を、トラックがものすごい速さで突き抜けていく。それに伴う強風で自転車の車体がぐらついて、ブレーキをかけて片足をついた。危ない運転をするものだと悪態をつきながら発進させる。
自転車はいい。風を感じられるから、全身を突き抜けていく風を感じながらペダルを漕いでいく。その道中、公園にさしかかり、公園に居座るオッサン(オッサンゴキブリ)と出会い、お互いに苦笑い混じりに会釈する。彼とはそれなりに交友があるのだ。あだ名をつけられた者同士か、単純にダメ人間同士だからなのかは微妙だけれど…………、今度、お酒でも持っていこうと嫌な思考を吹き飛ばす。お酒は好きだ。特にビールがいい。あの苦味がたまらなく癖になる。それと甘いものを組み合わせるとなおよし。つらつらとした無駄なことを考えるが、年中、引きこもり状態の私にははっきり言ってこの日差しは強すぎた。焦げる。焼け焦げる。比喩としては大げさかもしれないけれど、間違いない。吸血鬼でなくても日光で死んでんでしまう。
「いやいや」
小説家志望のくせになんというポギャブラリーの貧困さだと嘆いていると、横道を発見した。いつも通る道ではあるが、こんな場所はあったかなと思いながらなんとなく好奇心と、そちらが日の光が届かなそうで涼しそうな感じがしたから自転車のハンドルをきった。
その横道に入った途端、ヌメッとした感覚がした。暑さは感じるのだけれど、暑さの質が大きく変わったという感覚だ。
さっきの暑さを上から押しつけるような暑さなら、これはまるでまとわりつくような暑さ、言い換えるなら生温さをその身を包み込んでいく。引き返すことはできたけれど、道幅が狭くて、私の性格上、一度、通った道を引き返すのはなんだか気分がよくない。そのまま突き進むことを選択する。
それからしばらくはヌメッとした暑さを感じてはいても、これといったことはなかったが、いつまでも抜け出せない道に若干の焦りを感じていた矢先のこと、視界の片隅に古ぼけた公衆電話があった。あまり使われていないのだろう。
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