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「何してるんですか」
伸ばした手は、いつの間にかやって来た柏崎さんの一声によって空を描いた。
柏崎さんは、固まってしまった私の前の、私が手にしようとしていた写真を拾い上げ何事も無かったかのようにポケットにしまいこむ。
「勝手に物色するのはやめてもらえませんか、本当に」
こちらを睨みながらそう言った柏崎さんは、あろうことか、熱々の黒い液体を私の前に置いた。
「どうぞ」
「これは、何なんでしょう……」
「インスタントコーヒーですが……?」
「そういう意味ではなくて……」
いや、そういう意味なんだろうが。
憎々しげにソレを見つめる。
「これを、飲めと言うのですか……」
「え?……まぁ、はい」
柏崎さんは此方をじっと見ている。
喉が詰まる。
ソレの味を頭でシュミレーションしてみて、余計に飲みたくなくなった。
カップを持つ手が震えるが、構わずソレを口に運ぶ。
ソレが舌に触れた瞬間、私は吹き出した。
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