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「布留部 由良由良 止布留部……」
目を瞑り眉間に指を置いたまま唱える。
頼人には、冷気が緩んだように思えた。
ユズが手を差し上げた。
その先から金の龍が昇り氷を突き破り、暗雲に穴を開ける。
そして、光の雨が降ってきた。
天からハラハラと零れる光の粒は雨に似て氷の上を滑っていく。
粒と粒が合体すると速度を増し、尾を引いて流れていく。
光が落ちた土からは、緑が萌えだした。
「こんな……まさか」
頼人はユズの背に呟く
「生命を揺り動かす祝詞だよ。
僕の力というより、ここの大地が生命に溢れているんだ」
風を興す。
回転は生命の螺旋を震わせる。
すべてのものが命あることに喜ぶ。
「春って、植物の芽が張る、のハルなんだって。」
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