第3章

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「時の流れというのは、残酷なものよ……」  老齢の男は遠くを見る目をした。 「もしや、その剣士というのは……?」  少年は察した。 「今のはただの話だ、昔むかしのな」  老齢の男は否定も肯定もしなかった。  少年は立ち上がった。目に輝きが戻っていた。疲れ顔に、気力がみなぎっているようだった。 「もう行くのかね?」  と問うと、 「はい、行きます。行かなければなりません」  少年はまっすぐに見つめ返した。 「そうか……。大事な目的があるのだったな」  少年はうなずいた。 「はい。とても大事な目的です。あまりに大きくて途方もなくて怖じ気づいていましたが、心が決まりました。あなたのおかげです」 「いいや、そうではないよ。こたえは最初から出ていた」  少年の目を見つめた。 「あの山に、大切な人が?」 「はい。とても大切な人がいます。その人を救けるために、ぼくは旅を続けてきました」  老齢の男は微笑んだ。 「ならば行くがよかろう。ここで止めるのは無粋というものだな。大きな困難があるとわかっていても、それに立ち向かっていく意志があれば、きっと目的を達成できるだろうて」 「はい。のんびりしてはいられません。失礼します」  そう言って少年は背中を向けて歩き出す。
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