第2章

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 そんなあるとき、立ち寄った小さな町の剣術の大会が開かれることを聞き、出場することにした。  優勝すれば大金を得ることができた。路銀を稼ぐいい機会だと思った彼は、優勝する自信があった。剣の腕は今や相当に上がっており、こんな小さな町ならたいした剣士はいないだろうと思った。  その予想どおり、少年は順調に大会を勝ち進んでいった。  そして決勝戦――。ここまで苦戦することなく勝ってきたため、決勝戦の対戦相手の実力も過小評価してしまっていた。己の強さを過信し、相手を見くびっていた。  その油断が災いした。闘技場でのされてしまったのは少年のほうだった。  しかも少年は大怪我をした。  傷は深く、回復はままならなかった。なかなか治らない怪我に、ベッドの上から動けない日々が続いた。  少年は苦しみ、いつのころか、持っていた情熱まで失ってしまった。まるで張り詰めていた糸がぷっつりと切れてしまったように。  体の傷は治っても、心に受けた傷は癒えなかった。
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