第2章

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 旅立つことにした。たとえ少女が生きていなかったとしても、魔物を倒す。自分の人生は、そのためにある――。  強い決意をもって魔物を捜す旅は1年にも及んだ。雪深い平原をわたり、険しい山を越えて。  その間、一度も気持ちが揺らぐことはなかった。再度燃え上がった炎は容易なことでは消えなかった。  そしてついに、魔物の城へとたどり着いた。  険しい山の上に建つ城の中で、彼は驚く。そこに水晶に閉じこめられた少女が、さらわれたときのままの姿でいたのだ。  彼は魔物と対峙する。 「いま、救けるぞ!」  魔物は強かったが、彼も今やあのときの少年ではない。  素早い動きで魔物を圧倒し、力強い一撃を与える。  むろん、魔物の攻撃もすさまじいものがあったが、すんでのところでかわし、致命傷をまぬがれた。  魔物の懐深くに飛び込み、渾身の力で剣を突き立てると、もんどり打って倒れた。  激しい戦いの末に、ついに魔物を倒したのである。  魔物が死ぬと同時に水晶が砕け、少女は自由を取り戻した。  だが時間が止まったままだった少女は、あの少年が救けに来たとは思えない。  少女にとって、事実を知った衝撃は大きすぎた。すっかり壮年の男になってしまった少年を受け入れることができなかったのだ。
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