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「見ぃつけた」
「!?」
不意に何もないところから声がした。
ふっ、と目の前にいきなりゴーレムが現れる。
【姿消し】の魔法を使っていたのだ。
ゴーレムの大きな肩の上に、暗緑色のローブに身を包んだ魔術師が腰かける。
「君達で最後だね」
魔術師は杖の先を私達に向ける。
「待って、彼はこの島の人じゃなくて」
「どうでもいいよそんなの」
苛立たしげに吐き捨てる魔術師。
逃げようと海賊の手を引こうとしたとき、
「これなぁんだ?」
ゴーレムは大きな手を差し向けた。
手の中にはぐったりした祖母の姿があった。
「おばあちゃん!」
祖母はしわに隠れた細い目を見開く。
その瞳に苦しげな涙が浮かぶ。
「お逃げ……」
絞り出すような声。
「逃げてもいいけど、この老いぼれを握り潰しちゃうよ?」
魔術師は唇の端を吊り上げる。
祖母は静かにかぶりを振った。
「いいんだよ」
すべてを悟りきったような穏やかな表情。
「どうせあたしは殺されるよ。
奴隷にする価値がないからね。
孫の顔も見れたしあたしはもう充分生きたよ。
いいからお逃げ」
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