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「この姿が見えるの?」
「本当はコクトの姿は見えないものなのかな?
コクトは神様?」
神様と問われた言葉に、ゆっくりと首を横にふる。
その途端、がっかりしたような表情になる祈優。
「俺は神にお仕えする臣・黒兔」
「コクトは、神様に何かを頼まれてウサギの姿になって
私のところに来てくれたの?」
そう言うわけじゃないけど……その答えを少女が求めているから。
「そうだよ」
気が付いたら、そう紡ぎだしていた。
「神様は私を助けてくれる?
私の願いを聞き届けてくれるの?」
流れ込む彼女の心は、悲鳴をあげてそれに伴ってリクやサンタたちの心も不安定になっていく。
そんな彼女の想いに答えたくて、彼女の笑顔を感じたくて、俺は心のままに動き始める。
「人の世には優しさや思いやりが溢れている。
祈優が俺にくれた優しさ。
俺を思って抱きしめてくれたこと。
ただ……陸仁の想いも、祈優を思っての出来事。
彼は祈優の寂しさを誰よりも近く感じているから、
本当は祈優もわかってるはずなんだ。
素直に受け止めることが出来なかっただけ。
君の家族も同じなんだよ。
君の知らないお父さんを見せてあげる」
そう言うと、水晶にゆっくりと祈優を思って働き続ける
お父さんの真実の姿が浮かび上がった。
疲労を滲ませながらも白衣を翻して、仕事をするその人の胸元には
愛する娘の笑顔の写真。
娘が将来に不安を感じなくてもいいように男親として必死に守り続ける
不器用な父親の心が映し出されてた。
父は娘を思いやるが故に、今一番欲しい存在に気が付くことはなかった。
曇りガラスがゆっくりと晴れた時、少女は涙に頬を濡らしながら微笑んだ。
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