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ぴょんぴょんと、跳ねながら移動し続ける間も、
擦れ違う人は俺の存在が視界に入らないかのように忙しなく動き続ける。
暗闇に紛れて視界が悪い時間には、踏まれそうになったり、衝突されそうになったりと
決して優しい空間ではないこの世界。
不安は募るものの、ピョンピョンとその歩みだけは自らの意志で止めることが出来ないのは
主のことを信じているから。
「ねぇ、陸仁(りくひと)見て見て。
あそこ、まっ黒いウサギがいる」
「ってか、祈優(きゆ)またお前の可愛いものを保護したい病かよ」
そう言いながら、近づいてくる人間。
逃げるか?寄り添うか?この場合、どっちが正しい?
戸惑う思考は冷静な判断力を俺に与えてくれない。
「ウサギさん、怖がらなくていいよ。
私は祈優だよ。ウサギさんも、ここで一羽だけでいるのって寂しいよね。一緒に行こうか?」
そんなことを言いながら、祈優の手が優しく俺のもとに伸びて
俺は抱きかかえられるように、体が宙へと浮いた。
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