【予選作品・本編】 優しさの意味

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3.絡まる糸 祈優と陸仁に連れられて辿り着いた場所。 学校と呼ばれる小さな世界の中に、沢山の想いが溢れかえっていることに気が付いた。 言葉は話せなくても流れ込んで来る想いが俺の琴線に触れるから。 * 名前どうしよう。 ちゃんと私が幸せにしてあげたいの。 名前を決めて家族に迎え入れることが出来たら ウサギさんも嬉しいよね。 どんな名前にしよう? * この心は祈優。 * ったく、アイツ何考えてんだよ。 この前は捨て犬。その次は傷ついた鳩。 その後は野良猫。んで今日はウサギだと? お前の超幸せ天然志向。 そうやって言えたら楽しいだろうけど、ずっと傍で見てきた俺は アイツの心の裏側を知ってる。 寂しいんだ。 アイツの親父さんは、お医者さんで仕事が忙しくて アイツのおふくろさんは、アイツらを捨てて他の人と再婚した。 複雑な家庭事情のあるアイツだから、その寂しさをうめようと必死なだけ。 けどさ……祈優、何時までも逃げてちゃダメだと思うんだ。 だから俺は今回は流されない。 あのウサギは、アイツに連れ帰らせるんじゃなくて俺が連れて帰る。 * 強く何度も何度も響くように流れ込んでくる心は陸仁の想い。 それ以外にも命ある者の感情が渦のように流れ込んで来る。 祈優は俺を思って、優しさを差し伸べる。 だけど陸仁の想いも祈優を知る存在だからこそ、 彼女を思いあって辿り着いた優しさの形。 この世界は誰かを思い続けることが出来る温かい空間。 だけどお互いを思い続けても、報われない時もある。 だからこそ、相手を思いながらも擦れ違いや、喧嘩、言い争いは否めない。
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