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「じゃあ、ここで問題です。フォーチューンドールの呪術は、今話した三つのうちのどの呪術にあてはまるでしょう」
突然出された問題に面食らう。
暗く鬱々とした話題の最中だとは思えないくらい自然な切り出し方だった。
呪いだの呪術だの、反社会的で、大きな声で話せないことだ。なのに、天気の話みたいに淡々と朗らかに話されると、調子が狂うというか、なんだか拍子抜けしたような気分だ。
「え……ええっと、人形を使うから“模倣”?」
膝の上に置かれた桐箱に手をかざす。キラキラと光るピンク色の長い爪を、蓋(ふた)の隙間に差し込んだ。
「…………もしかして“共感呪術”なんですか」
「茉莉ちゃん、惜しい。涼くん正解です」
ぱかっと蓋を開き、机の上へ箱を置く。思わず椅子から腰を浮かせ、中を覗き込む。
中にはお父さんの病室で見つけた青色のフォーチューンドールともう一つ、ちょうど中心のあたりで真っ二つに裂けた黄色のフォーチューンドールが入っていた。
「もう呪詛は無効になっているけど、念のため触らないようにね」
九条さんはエプロンのポケットから細見のカッターナイフを取り出すと、刃の先を粗い縫い目の間に差し込む。
ブツリと縫い目を断ち切って、するすると糸を引き抜いた。
人の形に切り取られた枚をめくると、中から雲のような白い綿(わた)が現れる。
綿を指先でぐりぐりと押し、中を探ってゆくと、ピタリと指が止まった。
一瞬、九条さんはどこか感情の消えた虚ろな顔をした。不審に思って顔を窺った次の瞬間、すぐに元の表情に戻った。
綿の中に指を差し込み、中から小さな紙片を取り出す。それは封筒のように四角く折り畳(たた)まれた和紙だった。
和紙を広げると、中から5センチほどの黒く短い髪の毛が現れる。
「……やっぱりか」
九条さんが低く呟く。姉ちゃんは「あっ」と引きつった悲鳴のような声を小さく漏らした。
「………………」
白い紙の上に鉛筆で引かれた線のように、くっきりと浮かび上がった二筋の髪をじっと観察する。
見ただけでは、これがお父さんの髪の毛かどうかは断定できない。
ただ色と長さでは、短髪で黒髪のお父さんと特徴は一致している。
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