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まだ、これだけの確定要素で事態を判断してはいけない。
そう思う反面、一体だれがこんなことをしたのだろと犯人を割り出そうとしている自分がいた。
お父さんの病室に入れて、髪の毛を入手し、ベッドの下にフォーチューンドールを仕込むことが出来た人物。
お見舞いに来た人たちの中の誰かだろうか。それとも看護師や医師、清掃スタッフなど病院関係者だろうか。
――――最悪の場合、身内に犯人がいるかもしれない。
「お父さんのことが心配なのも、こんなふざけたことをしでかした犯人が憎いのも分かるけれど」
ハスキーな声が、犯人捜しの思考を遮るように響く。
細長い指と白い和紙に覆われ、髪の毛が見えなくなる。九条さんが和紙を折り目にそって畳み直した。
「涼くんも茉莉ちゃんも、危ないから復讐なんて絶対に考えないでね」
内心を見透かしたように釘をさされて、にわかに黙り込む。
姉ちゃんがぶんぶんと首を縦に振る。赤い目にじっと見つめられ、渋々頷いた。
「…………はい」
きつく握りしめた手のひらを、そっとテーブルの下に隠す。
「っていうか、わざわざ君たちが復讐する必要はないからね」
「えっ?」
そんな僕に、九条さんはあっけらかんと言い放った。
「どういうことですか……?」
「人を呪わば穴二つっていう諺(ことわざ)があるでしょ。“呪詛返し”って言ってね、呪術に失敗した場合、呪いはかけた犯人のところへ返っていくの」
机の上に置かれた、バラバラに分解されたフォーチューンドールと九条さんを見比べる。
「じゃあ、お父さんへかけられた呪術は失敗したということですか?」
「うん。この人形が第三者に見つかった時点で失敗。自分がしたことは自分に返ってくるものだからねえ」
悪い事はできないものねえ、と他人事のように呟く。
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