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やがて、それは記憶通りに現れた。
あの日と同じように、霧雨の中で。
目に見えないほど細かな雨のカーテンの向こうに、朱い塊がぼうっと二つ。
一本道だった参道が、二股に分かれていて、そこからまた鳥居が続いている。
左右どちらも、見た目は殆ど変わらない。
順路図によると、どちらを進んでもまた合流し一本に戻るらしかった。
濃くなりつつある緑と、鳥居の朱を霧雨の白がぼかして、子供の頃よく描いた透明水彩画のようだ。
ーーーーー確か…、こっちに行ったはず
微かな記憶を手繰り寄せながら、左の鳥居へと足を踏み出した。
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