ヴァーミリオン・ゲート

「ふう…」

本堂での参拝を済ませ、直ぐに背後の山に向かった。

あの頃はひょいひょいと登った石段が、地味にキツイ。

徹夜明けの後1日不眠不休で働いてからの、高速バス。

ここに来ようと思い立ってから、無理矢理提出日を前倒しにして、仕事を片付けた。

初めてここを訪れたのは、大学の古美術研究旅行。

格安で京都・奈良に旅行に行ったついでにレポートさえ提出すれば、単位が貰える人気の講座を、クラスメイトに誘われて軽い気持ちで履修した。

何も考えないで連れられるままにこの神社を訪れ、そして、

心を、奪われてしまった。

その非日常な佇まい、静謐な空気、

それまで触れたことなかった特異な、でも穏やかな空間ーーー

以来、機会を見つけては何度も足を運んだ。

就職し、仕事が忙しくなるまで、だったけど。