ヴァーミリオン・ゲート

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息が上がるのは、歳の、せいなんかじゃ… 延々と続く石畳の坂を、1人漫才しながら上がっていく。 懐かしいものが見えてきた。 無数に林立する朱い鳥居。 初めて来た時は、無邪気に感動したっけ。 テレビCMで、見た通りだって。 ただ、画面の中と違って、それらは鮮やかな色ばかりではなかった。 風雨に晒されくすんだものや、大分朱い色が抜けているものもあり、建てた時期も人もバラバラに並んでいることがうかがい知れる。 実際、脚の部分にそれぞれ記されている建立者、建立年月日は様々だ。 この山全体で一万基あるとも言われている、この鳥居たち。 古の世から現代まで、一体幾人の人が願いを胸にここに詣でたんだろうか。 ぽつり 大粒とは言えないくらいの、雨が頬に当たった。 蒸した空気に汗ばんでいた肌に、心地良い。 ーーーーーーいいや、このままで 傘もささずに、朱いトンネルに足を踏み入れた。
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