ヴァーミリオン・ゲート

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「ーーーーーー」 何か、聞こえる。 「ーーーーーぶ?」 誰か、呼んでる… 「ちょっとお嬢さん、大丈夫? 具合でも悪いの?」 「ーーーーーっ!」 軽く肩を揺すられて、途端に目が覚めた。 「えっ… あっ…、私っ!?」 「あ、気が付いた。 大丈夫…?」 慌てて顔を上げると、心配そうに私を見下ろす若い男性がいた。 は、恥ずかしい… どうやら私は、石畳に腰掛けた後、すぐそばの鳥居の脚にもたれかかった途端、意識を手放したらしい。 「やだ私、寝ちゃってた…」 両頬に手を当て思わずつぶやくと、その男性はホッと表情を緩めた。 年の頃は、30前後だろうか。 色白で、全体的に色素が薄い。 服装も白いシャツにライトグレーのコットンパンツだから、余計そう感じる。 いや、背景の朱が目に強すぎるだけか。 「ああ、寝てただけか… てっきり具合が悪くなったのかと…」 「……いえ、すみません、ご心配お掛けして。 寝不足で、ちょっと休憩するだけ…のつもりだったんですけど。 もう大丈夫ですから…」 慌てて立ち上がる。 しかし、急なのがいけなかったのか、ぐわん、と頭が揺らぐような感覚ーーーーー 「大丈夫…じゃなさそうだね」 気が付くと、背中を支えられ立っている自分がいた。 細身なのに、力強い腕。 「すみません…」 情けないのと気恥ずかしいので、謝る声も小さくなってしまう。 しかしそこでその男性は私の顔を覗き込み、ニッと微笑んだ。 「あとほんの少しだけ歩ける?」
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