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「……ごめんね。」
彼女はそう言い放ち、気まず気な苦笑いをしてきたのだった。
「いや、違うんだ!…そうじゃなくて…」
僕は思いもよらない形で彼女に謝らせてしまった。
挙句の果てには、困らせてしまった。
そんな自分に、言いたいことが上手く言えない自分腹立たしく。
それがいつしか「あなたの事が嫌いになった」と言ってくれない彼女に対して
理不尽な怒りに変わった僕は、綺麗な夕焼けに似合わなほどのこの場の重たい空気から逃げたい一心で口を開き
気が付けば僕は、再度俯いた彼女の横を駆け抜け、重たい空気から抜け出すことに成功した。
階段を駆け下り、踊り場に出ると僕は、ため息と共に床に座り込んだ。
なんであんなことを言っちゃったんだろう…あんなの本心じゃないのに。
いくらなんでも“頭が良いってのいうのは大変だね。……僕には理解できない。理解したくないよ!”
そんな言葉を彼女に放ち、逃げ出すなんて僕は最低だ。
「……泣いていたよな。ごめん絢音。そして、ありがとう」
最愛の人に傷付ける言葉を放ち泣かせて、逃げ出して
挙句の果てには、直接謝れないなんて……
そんな僕は誰かに言うわけでもなく、自分に呆れながら
本当に僕は――――
「天性の弱虫だ。」
そう呟いて泣いた。
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