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「はっけよい、のこった!」
とある小学校の放課後の教室。行司役の子供の合図により、力士らが勢いよく立ち合った。
力士たちは己の体をぶつけ合い、相手を土俵から放り出さんとする。
体といっても、別にまわしを取ったり張り手をしかけたりではない。子供達が囲む力士がぶつけ合っているのは、角と角である。
「負けるな! 頑張れ!」
「ムダです。体格差が違う……!」
彼らが熱狂しているのは、カブトムシ相撲。すなわち子供達が採集した自慢の甲虫を力士に見立て、戦わせて遊んでいるというのだ。
自然と触れ合う健全な遊びだ。一見ほのぼのとした光景であるが、よくよく見ると少々気になる所がある。
「頑張れ! 俺のカブト! あっ!」
ぺこーん!
どうやら勝負はついたようだ。片方のカブトムシが土俵外へと弾き飛ばされた。飼い主の少年は落胆する。
同時に勝った側の虫の飼い主は喜びのあまり高らかに笑った。
「フハハ! 僕のカブトの勝ちです!」
「カネダてめー! 汚ねェぞヘラクレスなんて!」
気になる所。それは、片方の少年が明らかに自分で採集したのではない外国産の巨大昆虫を手にしていた点である。
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