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その絵面は実にシュールだった。
体長が20cmほどの身体を器用にソファへと寄りかからせ、側にあるスナック菓子を左手で粘膜を利用して掴み取り、右手で相当の力を使ってリモコンを操作している。
ずっと眺めていればそれなりに可愛く見えてきてしまうのがまた怖い。
だが他の山椒魚と決定的に違っていた点が一つだけあった。 それは紅梅(こうばい)色の身体から時折炎のようなものがちらりちらりと見えるということだ。
普通の山椒魚ならば身体から炎を出すことなどまずあり得ない。
ましてやこの山椒魚は器用にソファに寄りかかり、プラスでスナック菓子を食べながらリモコンを操作するというトンデモなやつだ。
幾ら普段から人類の知恵がどうのこうの言っていた少年-大和でもこの光景を見ていればかつてそのようなことを言っていた自分がバカバカしく思えてくる。
暫く大和が山椒魚に視線を向けていると、どうやら視線に気づいたらしい山椒魚は、こちらを睨むようにして口を開いた。
「んぁ? なんだおめぇ」
「……」
(こいつ、今人間の言葉喋った…?)
大和はゴシゴシと目を擦(こす)り、頬をパシッと叩いて再びソファを見る…が、どうやら夢ではないらしく、頬がじんじんと痛みを伴い始めた。
大和は脳内でとりあえず山椒魚を外へ出そうと結論づけ、そぉ~っとソファの後ろへ回り、山椒魚を掴もうと手を伸ばした。
だが上手くいかず、ピョン!とソファの前に設(しつら)えてあるテーブルへと一回でジャンプし移動する。
移動を終えた山椒魚は再びこちらを見ると、突如直立して右前足を大和に向け、再び人間の言葉を喋った。
「馬鹿野郎。おめぇそんなんでこのオレを捕まえれると思ったら大間違いだぞコルァ」
「……は?」
「まあいいわ。とりあえずおめぇの名前を確認したい、教えろ。」
「え…た、太常…大和、です。」
「はぁ~おめぇが例の…」
そう言って山椒魚はこれまた器用に直立しながら両前足を組み、そして大和を舐めるように見回してふむふむと頷いているようだった。
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