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「サラ…マンダー……?」
「それは精霊の一種だ。
おめぇそんなのも分かんねえのか?」
「う、うるさいなあ!
知らなくたっていいじゃないか!!」
「ま、それもそうなんだがよ~?
言っとくがおめぇ、さっき聞こえた女の声には絶対に応えるんじゃねえぞ?」
「えっ…?」
「えっ…じゃねえよ馬鹿野郎!
さっきの女の声は“雪女”だ!!
あの女と言葉を交わしたりなんざしたらおめぇ食い殺されるぞ!!」
「ゆ、雪女だって!?」
雪女…そう、誰もが知っているあの日本の妖怪である。
雪女は日本全国に様々な伝承を残している。
その中の一つ、秋田県西馬音内(にしもない)には、雪女の顔を見たり言葉を交わしたりすると食い殺されるという伝承が残されている。
『人間に余計なことを教えるとは…精霊も人間を頼らなければならない程に落ちぶれたとはな』
「うっせえなぁ! 妖怪ごときがゴチャゴチャ言ってんじゃねえよ!!」
「え、ちょっ!
お前は雪女と話しても大丈夫なのかよ!?」
「ん?そりゃそうだろ。
オレぁ人間じゃねえからな!
とにかく、そこの雪女!
おめぇは早く姿を現しやがれ!!」
『言われなくてもそうするつもりよ』
刹那、ひときわ強い風が割れた窓ガラスから吹き抜けた。 あまりの風の冷たさに大和は身を縮こませる。
「おい!分かってるだろうが雪女の顔見るんじゃねえぞ!!」
「って言ってもどこに雪女がいるか分からn…!」
大和が山椒魚の姿を見ようとしたその瞬間…
「私はここよバァアアアアアカ!!!」
大和の視線が合ったのは山椒魚ではなく、雪女だった。 腰まで伸びた長い黒髪にとても生気があるとは思えない程に白い肌。
おなじみの白装束を身に纏(まと)ったその姿は、普通の人間に恐怖を植え付けるのには充分だった。
「う、うぁあああああああああ!!!!!」
家の中を大和の悲鳴が満たした。
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