第1章

2/8
前へ
/10ページ
次へ
『なんでバスケ部がないんだー!!』 俺が進学校の徳田高校を選んだ理由は、二つ。 一つ目は、かわいい女子が多いこと。 男子校だった俺にとっては、最重要項目。 二つ目は、通学圏内で一番バスケが強いこと。 中学での学力はというと、学年下から数えて3番目の底辺。 自分で言うのもなんだけど、めっちゃ勉強したよ、いわゆるガリ勉。 寝ても覚めてもバスケと勉強の繰り返し。 うちのじっちゃんなんて、合格した当日は、町内会の人達集めて朝まで酒盛りだよ。 おかげでご近所歩けば、『結城さんちの馬鹿息子』から『結城さんちのお坊ちゃま』に昇格したわ。 まあ、それはいいとして。 今年早々、バスケ部員が喫煙騒ぎを起こして廃部になっただと! 昨年の学校説明会では、先鋭部員募集とあれだけ宣伝しておいて、俺の青春を返してくれー。 もうさ、こうなったらチャらいと言われようが、女子だよ、女子。 ところが、進学校だから入学したての女子は、垢抜ける前の原石ばかりなのだよ。 徐々に磨かれて、2、3年生で開花するらしい。 ――そんなこと、知らないし。 「ゆきー、いつまですねてんの? 部活紹介、見に行こうよ」 屋上のフェンスに寄りかかっている俺のそばまで来た春風太郎(はるかぜたろう)は、部活紹介のパンフレットを持ち、手を左右に揺らしてる。 「もも、その女みたいな言葉遣いと態度、イライラするから改めろ」 「2時から体育館だよ、時間ないから、ほら立って!」 ももは俺の手を取って、力一杯引っ張っているつもりらしいが、185cmの俺はびくともしない。 ゆっくり立ち上がって、160cmのももを見下ろした。 「……もも、少し背が伸びただろ?」 「僕だっていつまでも産まれたてのももたろうじゃないんだからね!」 ももは俺を見上げて、嬉しそうに笑った。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加