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「すげーな」
体育館の舞台上で、演劇部がコント劇をしているのだが、会場は静まり返っていた。
「笑いどころが難しいね」
ももにもよくわからないようだ。
「ゆきは部活動するの?」
「んー、バスケ以外考えてなかったからな。ももは?」
「僕は決めてるよ。あ、出てきた!」
あっという間に陳腐なコント劇は終わり、数人が楽器のセッティングをはじめた。
「吹奏楽か? ていうか、女子ばっかだな」
「ほらほら見て、あのショートカットの子。僕好きなんだよね」
「はっ?」
いつの間に恋してんだよ。
やっぱりお前も男だな。
いつにもまして、でれーっとしやがって。
そのとき、耳をつんざくような音が体育館に響いたと同時に、俺の周りから大きな歓声が上がった。
「アーユーレディー?」
舞台の真ん中で、エレキギターを持ったおかっぱの女子が、テンポの速い曲をかなで始めた。
「……なんだ、この感覚」
「彼女、格好いいでしょ?」
あの子が、ももの好きな子か。
彼女はきゃしゃな体で大きなギターだけでなく、頭もぐるぐる回していた。
バスケしか知らない俺にとって、彼女が見せてくれたものは衝撃的だった。
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