第1章

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「1年A組の結城雅紀(ゆうきまさき)です。よろしくお願いします」 どうして俺までバンド部に入らなきゃならないんだよ。 それにバンド部って名前、格好悪いだろ。 「結城君だけね、楽器やったことない人」 「いや、俺もたて笛くらいなら……」 「ふん」 ――は? 今、鼻で笑われたよな、俺。 2年C組、花巻水乃(はなまきみずの)。 ――おかっぱ娘。 「まあまあ、ゆきちゃん」 もも! お前はどっちの味方なんだっ、 友情より女を取るような奴だったんかい。 「それでは恒例の、あれ、やりましょうか」 おかっぱ娘がエレキギターを持って、新入生の前に立ちはだかった。 新入生歓迎会的な、演奏会か? 「1年、一列に並べ!」 「は、はいっ!!」 ここは体育会系か? それにしても、ももはこの口の悪いおかっぱ娘のどこがいいんだか。 「はい、ギター持って」 列の一番前の女子がギターを持たされた。 「ダメ、次」 後ろの人にギターが移る。 「ゆきー、水乃ちゃんがもうすぐ僕のところに来るー」 「……俺、お前の趣味、ほんと、わかんねえ」 ももがギターを持たされた。 もも、おかっぱ娘しか見てないな。 好意が相手にバレバレだろ。 「ほら、あんたの番」 ひとりひとりギター持たせて、何の意味があるってんだよ。 はいはい、持てばいいんでしょうがっ。 「…………」 いつまで持たせる気ですか? おかっぱ娘。 「部長。決まりました。1年A組の結城雅紀です。明日放課後、音楽室集合ね。1年解散!」 周りの1年生が散る中、ギターを首から提げて立ち尽くす俺と、笑顔のおかっぱ娘。 「このギターは、今日から結城のもの。代々受け継がれるものだから大事に使ってね」 ――明らかにさっきまでの態度と違うよな、笑顔初めて見たわ。 そして部室の入り口から顔だけのぞかせて見ている、もも。 なに泣きそうな顔して俺を見るんだよ。 意味わかんねー。
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