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明朝7時。
結局、一睡も出来なかった。
ももになんて言えばいいんだ。
とりあえず、水乃に俺の真意を伝えよう。
一段と重く感じる玄関の扉を開けた。
「ゆうき、おはよう! 顔が見たくて先に来ちゃった」
右肩を上げてにこりと笑う水乃の背後に、手を振るももが見える。
「ゆきー、おはよー。あ、れ? 花巻先輩、おはようございます?」
ももの様子がおかしい。
だよな、うちの前でこのメンツは不自然だ。
俺も理解できないんだから。
「春風君、おはよう。これから私も、ももって呼んでいい?」
「も、もちろんですよ。僕、花巻先輩の大ファンなんです。ワイシャツの背中に、サインもらってもいいですか?」
――ももよ。まずはこの状況の異常さに反応しろよ。
水乃もさらさらと、ももの背中にサイン書いてないでさっ。
「もも。今日から私は結城の彼女だから、これから毎日3人で登校しよ?」
「水乃、俺、返事してないし。勝手に決めんなよ!」
「…………」
ほら、ももが固まったじゃないか。
「ゆきと花巻先輩が付き合ってるの? いつから?」
「……水乃、ちょっと来い」
玄関横のくぼみに水乃を呼び、申し訳ないが率直に言わせてもらおう。
「悪い、水乃に全く興味ないから」
泣かれでもしたら面倒だな。
などと考えた俺が間違っていたようだ。
「……結城が私を嫌いでも、私は結城と恋がしたいの! なんて誰が言うかっ!! 絶対あんたなんか選ばないから。ギター伝説なんてひっくり返してやる!! いこ、もも」
腕もつかまれたももは何度も振り返り、なぜかにらんでいる。
もう勘弁してくれよ。
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