第1章

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明朝7時。 結局、一睡も出来なかった。 ももになんて言えばいいんだ。 とりあえず、水乃に俺の真意を伝えよう。 一段と重く感じる玄関の扉を開けた。 「ゆうき、おはよう! 顔が見たくて先に来ちゃった」 右肩を上げてにこりと笑う水乃の背後に、手を振るももが見える。 「ゆきー、おはよー。あ、れ? 花巻先輩、おはようございます?」 ももの様子がおかしい。 だよな、うちの前でこのメンツは不自然だ。 俺も理解できないんだから。 「春風君、おはよう。これから私も、ももって呼んでいい?」 「も、もちろんですよ。僕、花巻先輩の大ファンなんです。ワイシャツの背中に、サインもらってもいいですか?」 ――ももよ。まずはこの状況の異常さに反応しろよ。 水乃もさらさらと、ももの背中にサイン書いてないでさっ。 「もも。今日から私は結城の彼女だから、これから毎日3人で登校しよ?」 「水乃、俺、返事してないし。勝手に決めんなよ!」 「…………」 ほら、ももが固まったじゃないか。 「ゆきと花巻先輩が付き合ってるの? いつから?」 「……水乃、ちょっと来い」 玄関横のくぼみに水乃を呼び、申し訳ないが率直に言わせてもらおう。 「悪い、水乃に全く興味ないから」 泣かれでもしたら面倒だな。 などと考えた俺が間違っていたようだ。 「……結城が私を嫌いでも、私は結城と恋がしたいの! なんて誰が言うかっ!! 絶対あんたなんか選ばないから。ギター伝説なんてひっくり返してやる!! いこ、もも」 腕もつかまれたももは何度も振り返り、なぜかにらんでいる。 もう勘弁してくれよ。
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