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「あぁ、これ。デザイン選ぶ時、ここだけピンクで可愛いなって。ネイリストさん曰く恋愛運アップのデザインだとか」
そう言ってハッとして、広げた手を下ろした。いい年して恋愛運なんて意識しているのかと思われるのは恥ずかしい。
「それこそ都市伝説じゃん」
「え?」
聞こえてはいたが、梓には言葉の意味が分からなかった。
「なんだっけ、左手の爪をピンクに塗ったら恋が成就するだったかな」
「そんな都市伝説が?」
「あぁ、飲み会で聞いた話だけど」
「田舎の人はネイルなんてしないと?」
「いや、違うって。田舎関係ないってさっき話したじゃん。島田さんって本当に変わってるね。今までずっと見てきたけど、初めて知った」
「そんなこと……」
そこまで言って梓は違和感に気づく。
あれ? 今、岩本さんなんて?
「変わってるよ。面白くて、可愛い」
岩本が梓を見つめているので、視線をどこに向けたらいいのか分からなくなる。
「あの?」
「気づいてもらえてる? 口説いてるつもりなんだけど」
その言葉で頭が真っ白になった。
「え、あの、口説くって、冗談ですよね」
「残念だな。信号が青にならなかったら、目を見て冗談じゃないよって言えたのに」
車はゆっくりと左折する。
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