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「あそこは有名な私立だよ。でも、こんな時間に下校?」
「休み明け試験ですかね?」
「あぁそうか。にしても随分懐かしい言葉だな」
岩本がハハッと笑い、梓もつられて笑うが、本当は梓にとって高校は笑顔で懐かしむような思い出ではない。
進学校と言われる高校だったため、勉強漬けの毎日。高校から連想する言葉は「しんどい」「試験」「寝不足」というなんとも残念な高校生活だった。
「いいなぁ、楽しそうで。制服も可愛いし」
紺色のブレザーに赤系のチェックのスカート。それは遠目からでもお洒落な都会の制服と分かる。
自分の高校時代に戻りたいとは決して思わない。しかし過去に戻り別の高校を受験して楽しい青春を満喫したいと考えることはある。
「有名なデザイナーがデザインしたらしいよ。島田さんはどんな制服だったの?」
信号が青に変わり、車は発進し、彼女達は見えなくなった。
「地味なセーラー服ですよ。ありえないくらい田舎で、あんな風に寄り道する所もなかったです」
梓の地元にはファミレスもファーストフードもない。高校生が寄り道するのはドラマや漫画の話だとかつては本気で思っていた。
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