車中にて

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「島田さんはこっちの出身じゃないの?」 「はい、大学で出てきたので。岩本さんは?」 「俺は高校も大学もこっち。ちなみに高校の制服はデザイナーとかではないけど、さっきのブレザーに結構似てたよ」 スーツ姿の岩本を見ながら、彼の制服姿を思い浮かべてみる。この風貌であれば、高校のヒーロー扱いされていたとしても不思議ではない。 「それは素敵そうですね」 「何それ、制服が? それとも俺が?」 視線は前方のまま、少し冗談めかして笑う。 彼でなければ寒い言葉なのに、ずるいなと思いつつ、梓も笑った。 「どっちもですよ」 「いや、そこは制服って言ってよ、冗談なんだから。でも本当に制服は評判良くて。それ目当てで入学したって話も聞いたよ。だからか見た目のいいのが集まってた」 「岩本さんもその一人なんですね」 「いやいや、俺は全然。制服関係なく近所だったから」 とぼけるのも慣れたもので、攻めたり引いたり、これがトップの営業の話力なのかと梓はこっそり感心していた。 「またまた。見た目のいい人って意味ですよ」 一瞬の間の後、岩本は笑う。 「島田さんって、そういう冗談言うタイプだったんだ。意外。でも反応に困ること言うのは別の場所にしてね。驚いて事故ったら大変だから」 「やだ、冗談言ってるのは岩本さんじゃないですか」 「参ったな」 今度はその横顔に苦笑いが浮かんだ。
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