76人が本棚に入れています
本棚に追加
群集心理が厄介なのは、主馬も父である田嶋からは話として聞いている。
先の、天明の打ち壊しなどで。
「けどよ、この青瓢箪が手前えだって名乗り出たんだろ? だったら、それで決まりじゃねえか」
伊丹の言う通り、自白している以上。
この自首した子供は、切腹か斬首だろう。
恐らく、主馬か杉下。
若しくは、北町の廻り方与力の仕事となる。
「神戸さンよ。若し切腹か斬首なら、俺ッちを介錯に指名しちくれィ。どうも、苦ェヤマになりそうな気がする」
主馬が自ら首討ちを買って出るなど、非常に珍しい。
「まあ、明日は雪?」
幾ら普段から仕事をしていないとは言え、それは失礼だろう。
雪に。
「お、鶴か。寿限無の絵は、見付かッたか?」
「勿論です。それで、これは?」
どっちの事か判らず、主馬は暫し硬直。
「……、どッちだ?」
「松姉さんの方です」
抱き着かれてる方だと、鶴は言う。
「良い匂いがするなンて言ッてる傍から、これだ。どうせ、も抱き着くンだろ? 良いよ、抱き着いて」
諦めたのか、主馬は鶴にも許可を出した。
悪戯を思い付いた様な笑顔で、鶴も抱き着く。
最初のコメントを投稿しよう!