~第一話~ ひとひらの、雪も消えゆく朝の靄

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「評定所としては、まだ元服も前だと言う事で内済にしようと言う動きが有ります。ですが、決定が未だですので少々不安要素が残ってますが」  そう、侍同士なら少々でも家格が違うだけでゴリ押しが出来る。 「家格ですか……。どちらが、どっちなんです?」  亀山の質問は、被害者と加害者。  どちらの家格が上かを知る為。 「そう言えば、身元を明かしてませんでしたね。仏さんは、伝馬町に屋敷を構える三百石の旗本で徳田新之助。殺った方は、二百石の旗本で三笠精之進と判明してます」  どっちも、旗本。  しかも殺った方が家格が下では、ゴリ押しされて腹を切るか侍にとって恥辱の斬首になっても可笑しくは無い。 「この場合、喧嘩両成敗だからなァ。仕方無ェッちゃ仕方無ェか」  しかし、気になるのは動機。  幾ら憎たらしいとは言え、実際に行動を起こすまでには色々と葛藤が在る筈。  その葛藤を出さず、出頭したとなれば何者かが介在し。  強要した疑いも有った。  とは言え、それを調べるには八丁堀は管轄違い。  指をくわえて、見ているしか無いのが現状。  やはり、表で調べるには制約が多過ぎた。  かと言うと、裏の殺し屋稼業で調べるにはネタが少な過ぎる。
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