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「田嶋さんの御父上なら、どうしたでしょうねえ……」
杉下の意識は、既に亡き田嶋の捜査に思いを馳せている。
「さあ……? 取り敢えず、参考にはなりました。明日の評定で決まると思いますので、結果は岩瀬加賀守から伝えられるでしょう」
「根岸さンも、おッ死ンじまッたからねェ。歳も歳だッたけど、仕事のし過ぎだろ」
さる文化十二年、現在の文化十五年から三年前に根岸肥前守鎮衛は在職中に死去していた。
町奉行と言うのは激務で、旗本の役職の中では過労死のトップを飾る職務。
在任期間が十年を越える旗本は数える程度しか居らず、十八年も在職したのは大岡越前守忠相。
曲淵甲斐守景漸、根岸肥前守鎮衛くらいなもの。
「還暦過ぎてからの奉行ですしねえ。おっと、これは内緒で」
流石に目附の前だと、口を滑らすのも厳しい様だ。
「では、私は戻ります。書類を纏めなければなりませんので」
挨拶を聞く前に、神戸は立ち去る。
「我々も、調べてみましょう。どこまで出来るか、判りませんがね」
杉下の好奇心に、火が着いた様子。
「行きますよ、亀山さん」
言われるまでもなく、亀山は聞き込みをする積もりの様だ。
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