~第一話~ ひとひらの、雪も消えゆく朝の靄

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 言うが早いか、ぬらりひょんの袖を祢祢子は引っ掴む。  そのまま背負い投げを行い、投げ落とす。  辛うじて急所は避けた様だが、川岸の護岸石に強かと腰を打ち付けた様子。 「おごおおおおおおおおお……!?」  やはり、年寄りには腰へのダメージが一番効く様だ。 「ふんだ。一昨日お出で」  どこまで不憫なんだ、ぬらりひょんは。 「てな訳だからよ。勘弁な」  千太は、もう裏稼業への復帰は見込めまい。  それだけの、重傷なのだから。 「そうか。邪魔したの」  痛む腰を擦り擦り、ぬらりひょんは大川端を去る。  その寂しげな背中へ、祢祢子が舌を出してのベロベロバアをしてるとも知らずに。          四  神戸が主馬の家で旗本同士の喧嘩らしい一件を推理してから六日後。  赤坂は品川の近く。  閻魔と江名は反物を見繕い、着物を仕立てようと二人で出向いて居た様だ。  あれでも無い、これでも無いと選ぶのが楽しい様で方々の店を出ては入るを繰り返す。  そんな中、偶々寄った店で閻魔が気付く。
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