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「ねえ、ちょいと……」
顎で指し示す先には、奥の生活空間に通じる暖簾の近くに。
場に、そぐわない前髪残しの少年が。
腰に二本を差した少年は、辺りを見回すと誰も注意を向けていないのを確認。
おどおどしながらも、反物を袖に入れた。
「……、やったね……」
裕福とは言え無さそうだが、食うに困る様な装いでも無かった。
余りにも挙動不審な為、閻魔と江名。
二人は、見続ける。
慣れてない手付きは、どう見ても素人。
なんらかの理由が在るのか、兎に角。
バレない様にと、必死だった。
「盗むなんて莫迦な事するねえ。やっぱ、さ」
「だよねえ。あ、出てくよ?」
人間とは程遠いのに、考え方が人間臭い。
好奇心は猫をも殺すと言うが、好奇心を抑える事が難しい様だ。
「気に入った柄は有った?」
「無いねえ。ちょいと、行ってくるよ」
閻魔も心得た様で、残る。
江名が店を出ると、先刻の若侍が袋小路の。
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