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引き剥がそうとするも、松と子供達は離れようとしない。
「そう言や、鶴は?」
「お出かけ。何でも、お気に入りの絵師が錦絵出したって聞いたらしくて」
当時から、現代で言う萌え絵と言う物は有った。
男が買う物は美人絵と呼ばれ、女性が買う物は役者絵と呼ばれる。
「今度は、誰の絵だッて?」
「寿限無と歌川広重だって。絵より良い男が、ここに居るのにねえ……」
鼻を擦り付ける様に、首筋へ顔を埋める。
「お待たせしました……、って……。お邪魔、でしたかね?」
変な気を利かせながら、亀山が後退った。
「変な気ィ回すな。ところで、杉下さンと伊丹は?」
「来てますよ。田嶋さんの言う変な気を回して、庭へ入って来てませんが」
ニヤニヤ笑う亀山の顔には、出歯亀でもしそうな助平さが漂っている。
「お邪魔だったと、思いましたので」
「こりゃ、どうも。南の与力様……」
平常な杉下と異なり、伊丹は何故か低姿勢。
やたら腰が低い。
「まッたく……。神戸さンが仕事だッて言ッてンでしょうに。で? 話ッてなァ、さッきの?」
「ええ。順を追って、説明しましょう」
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