~第一話~ ひとひらの、雪も消えゆく朝の靄

6/153
前へ
/1691ページ
次へ
 途中と言うか、木挽町の大番屋で捜査が仕切られてると言うのは主馬。  そして杉下も聞いている。 「奇妙な話ですよねえ。それで、神戸さん。混み入ったとは、どの様な?」 「それなんですが。あなた方、町方で仰る【御用鞭にした】のですよ。で、手を下したと自訴してきたのが何と……。青瓢箪とも言えそうな、貧弱な子供でして……」  そもそも、神戸がしゃしゃり出てる時点で侍。  御家人か旗本絡みだと言う事が理解る。 「神戸さンが出てるッて事ァ、どッちか。或いは、どッちも侍ェだと」 「当たりです。双方とも、御家人と旗本の子息でした。事情を聞いたのですが、些細な事だと口を割らなくて……」  それで気掛かりになり、八丁堀へと来た様だ。 「確かに、些細な事でも喧嘩になりますねえ。ですが、何が引っ掛かるのです? それを聞かない事には、お答え出来ませんが」 「これを、見て貰えますか」  差し出したのは、小石川詰めの同心。  米沢が記した、死体の検分調書。  それに目を通した主馬と杉下は、理由を理解した。 「成る程。これなら、神戸さんが訝しむのも頷けますね」 「全身に万遍無く、拳大の痣ですかィ。確かに、非力な青瓢箪らしい殺り口ですなァ」
/1691ページ

最初のコメントを投稿しよう!

76人が本棚に入れています
本棚に追加