~第一話~ ひとひらの、雪も消えゆく朝の靄

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 非力で抵抗しなさそうな者が、死体をボロボロになるまで壊す事は結構在る。 「ええ。ですが、自訴した子供の手指や足指には骨が折れた痕跡が無いのです」  元来、骨が固まってる大の大人でも殴り方が悪ければ骨折は免れない。 「妙だな……。ねえ、杉下さん。そんな事って……」 「有り得ません。これ程、執拗に殴ってるにも関わらず。骨が折れてないと言うのは、道具を使用した事になります。それこそ、棍棒や石の様な」  だが、死体検案書から道具を使用した形跡は見当たらなかった。 「詰まり神戸さんは、青瓢箪が本ボシじゃ無えと? 俺等は逢っても居ねえんで、判断は出来ませんがね」  伊丹の毒気にも、神戸は平然と対応。 「そうです。これは、大河内さんも同じ意見でして……」  大名を監視する大目附の大河内でさえ、同じ意見となると。  最低でも、引っ掛かりを持つ者は四人。  いや、五人か。  不可思議に思っているのは。 「刀も抜かずッて事ァ、青瓢箪の仕業じゃねェな。お互ェ、同じぐれェの体格なら対手が得物を持ちゃ刀ぐれェ抜くだろ。そうじゃねェから、恐らく複数で取り囲ンで嬲ッたな?」 「私も、田嶋さんと同じ意見です。ここまで悪質なのは、逆らえない人数で囲んだからでしょう」
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