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金髪パンマンの顔からは、どうにもピンチ度が伝わらない。それどころかナニがピンチなのか怪しいものだ。
「だって、エレベーターは荷物用っスよ。」
「それがどうかしたのか。」
「取り出す人は、乗れない訳で……。」
ガタン。エレベーターが上の階でとまる音がきこえた。
「下から、人がきますね。」
ピタッ。足をとめて耳をすます。確かに下から誰かくるような気配がある気がする。
そおっと下をのぞき込むと、普段から目にする陸奥屋のはっぴ。スタスタと階段をのぼる女性従業員だ。
「そういうことは早く言え。戻るぞ。」
「え、地下は?」
「無理に決まっているだろ。」
「え~階段のぼるのダルいっス。マジ勘弁なんスけど。」
のらりくらりのアンパン野郎を押しながら階段をのぼる。
「焼肉の件はなかったことになるぞ。」
「焼肉とか、もうどうでもいいし。」
どうやら、この男は顔の大きさを三倍にしたいらしい。私は握りこぶしをつくった。
「わかりました。わかりましたよう。まったくとんだハゲ爺さんだ。」
「ハゲとらんわ。」
目の前の腰に渾身のワンパンチをくらわせた。
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