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エレベーターのとまった先まで走ると、今しがた通った段よりもほんの2・3階くらいのぼるはめになった。
ぜえぜえ。
「亀き……あ、いや、高橋部長。なんかおかしくないっスか?」
ぜえぜえ。もはやツッコム体力はない。
「なにが……だ。」
「今まで近くに来た人、みんな女なんス。」
……は?
とうとうこの阿呆のネジもゆるみすぎて抜けてしまったのか。かわいそうに。
私は哀れみをこめた視線をおくる。
「これ、きっと御神体の御力っスよ。部長のナニもこれで復活するんじゃ……。」
ミシ。ふくれた赤い顔がさあっと青ざめる。
「そうだな。じゃあまずは、お前のがまだ使えるように祈っておけ。」
未来ある若者が、夢と希望と大事なナニかを失ったようにもだえた。
それにしても、近藤の言う通りだ。
ヒールの女性。お子様。従業員。ことごとく女性である。
もしや、本当に御神体が呼びよせているのか。
カツン、カツン。
またしても下から女性のものらしき足音。
私はうずくまった部下を無理やりたたせて、サムシングを担いだ。
カツン、カツン。
はっ! 上からも。それもまた女性のような。
上からも下からも近づいてくる足音。……万事休す。
「挟まれたみたいっスね。」
満身創痍の若者は手すりにもたれかかりながらもその場にたつ。ダメージが足にきているのか膝がわらっている。
「俺が囮になるっス。その隙に下にいってください。」
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