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「いやぁ営業部長、凄いっスね。見てください、ギンギンっスよ。」
例えるならキノコの傘。もしくはツクシの頭。
ふくらんだ先端をぺしぺしと叩きながら、部下の近藤が話しかける。
「ぺしぺしするな。近藤、一体これはなんだ?」
私はサムシングとふざけた若者を交互ににらむ。
「なんだって言われても、ナニですとしか。」
「見りゃわかる。なんでここにあるかってきいているんだ。」
近藤は口をとがらせる。
「部長が用意しろって言ったんじゃないっスか。」
「嘘つけ。私がこんな、その、あれを用意させる訳ないだろ。」
「え~、言いましたよ。祭なんだから神輿くらい出せ、って。」
もう一度サムシングをまじまじとみる。
私の身長よりひとまわり小さいだけのビッグサイズ。血管を思わせるライン。まるで本物をそのまま巨大化させたようなリアリティ。
「どこをどう見たらこれが神輿に見えるんだ?」
「あ、もしかして知らないんスか? 地方ではすげぇ有名なんですよ。子宝成就の祭の御神体っス。」
もしかして、目の前にいる近藤という男はバカなのだろうか。
確かに私は神輿くらい準備しろと言った。最後なのだから少しくらいハメを外してもいいだろうとも言った記憶がある。
しかし、これは……。
「御神体っス。借りてきました。」
サムシングと肩をくむ近藤。
これは少しなどというレベルではない。あきらかにやり過ぎだ。
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