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「こんなもんをさらす訳にはいかん。隠すぞ。」
つい先ほどまでは白い布によってサムシングが隠されていた。また布を巻いて地下の倉庫にでも突っこんでおけば、客にも従業員にもみられる心配はない。
「おい、近藤。さっきまで被っていたカワ……じゃない、布はどこだ?」
「え、ないっスよ。」
近藤の両手がひらひら。
「な……さっきまで持っていたじゃないか。どこにやった。」
「え~、経理の子が屋上で使うとかで。」
「渡したのか!?」
「ちょ……唾をとばさないでくださいよ。」
こいつ、今日が最後だからってナメているのか?
眉間と拳に力がはいる。そのすっとんきょうな顔を叩いてもいいだろうか?
いや落ちつけ。落ちつくんだ、亀吉。
今すべき事はこの金髪ブタ野郎を殴ることじゃあない。陸奥屋のイメージを守るために、このサムシングをどうにかして隠すのが先決だ。
「とにかく、これがお客様の目に入ってはいかん。布団でもバスタオルでもビニールシートでも、なんでもいい。これを包むものを持ってこい。」
「はい、りょうかいです。部長。」
二人で探した方が早いかもしれないが、ひとりはサムシングを見張った方がいい。それに近藤を残すのも危険だ。こいつはサムシングを放置するかもしれない。
「いそげ、近藤。頼んだぞ。」
私はのらりくらり歩き出す若者の背中を蹴った。
――30分後。
やはり、この男に頼んだ私がバカだった。
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