サムシングを隠せ!

5/20
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
「近藤。」  私は薄くなった頭皮をかかえた。 「なんスか?」  手には私が望んでいたものとは別のものが握られていた。 「布団は?」 「今日はわざわざ買う人もいないだろうって在庫もなしっス。」 「ビニールシートは?」 「全部屋上で使用されてるっス。」 「じゃあ、バスタオルは?」 「さっきの通り雨で、客が濡れたからプレゼントしたみたいっスね。」  私はうなだれた。やっぱり自分で行けばよかった。 「なんか、なんでもいいからこれ以外にもあったろ?」 「いや、ないからこれ持ってきたんスよ。結構恥ずかしかったんスからね。」  彼は満面の笑みでビニールに入った商品を私の手にのせた。  XXLサイズの女性用ストッキング。いったいこんなものでどうやって隠せというのか。 「さ、部長。とりあえず着けてみましょう。サーモンピンクよりはいくらかマシなはずっス。」  本当にこんなものでどうにかなると思っているのか。どう考えても隠しきれないであろうそれを一応着けてみた。  着けて、みたのだ。この変態の口車にのって。 「うわあ……。」  いくらかマシと言っていた彼も、なにか恐ろしいものでも見ているように口に手をあてた。  言葉もない。こげ茶色のストッキングがまさかこんなことになるとは。これではまるで……。 「なんかコンドームみたいっスね。」
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!