サムシングを隠せ!

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 関係者以外立ち入り禁止の階段まではいくつかの店舗を通らなければならない。普段はあまり遠くは感じないのだが、人目を気にしながらコソコソと歩くと随分と距離があるように感じる。  右をみる。左をみる。もう一度右をみる。  店舗と店舗のあいだの通路は特に慎重に行かなければ。 「おいおいおいおい。なんで手を挙げている。目立つだろうが。はやくおろせ。」 「あ、すいません。つい癖で。」  お前は横断歩道を渡る小学生か。ツッコミの代わりにジャーマンスープレックスでもかましてやろうかと考えたが、それどころではない。  コツン、コツン。  人の気配だ。私はすぐさま右の家具屋へとむかう。  ぐい。なぜかサムシングは動かない。 「左、おもちゃ屋っスよ。」  お前か。 「右の家具屋の方が、人いないだろ。」 「自分、こういうとき左じゃないと落ち着かないっス。」  コツン、コツン。ヒールのような足音が近づいてくる。 「いや、落ち着かないとかじゃなくて。」 「知らないんスか? 人間の習性で左に……。」 「ああもう。わかったから。はやく隠れろ。」  私はこのスットコドッコイごとおもちゃ屋にサムシングを押し込んだ。  おもちゃ屋にはピノキオの人形やら、遠隔操作で動くロボットやら、ヒーロー戦隊シリーズの売れ残りのグリーンやらが置かれていた。  そんな中でそびえ立つサムシング。  子供の夢はなんぞはない。むしろ大人の玩具だ。
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