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「それより、おじさん。これなあに?」
純粋無垢な少女は巨大サムシングを指さす。
「こ、これは……。」
なんと言えばいい。まさか大人の玩具と言うわけにもいかん。御神体と言って理解する相手でもない。ましてやナニと言えば軽くトラウマになるかもしれない。
慎重に、慎重に。お子様といえど客は客。慎んで回答せねばなるまい。
私は固唾を飲んだ。
こげ茶色に包まれたサムシング。そして周囲の状況。
「これはだな、お嬢ちゃん……。」
答え此処に有り。
私はおもちゃ売り場の棚から素早くクレヨンをとり、キノコの傘、もしくはツクシの頭の部分に落書きをした。
余談だが、私には娘がいる。社会人になって何年もたつのに、いまだにスマフォーンだかテレフォーンだかでゲームばかりしているような娘だ。なにがかわいいのか、そのゲームのキャラクターをいつもカバンにぶら下げている。
今回はそれに助けられたということだ。
「お嬢ちゃん。これは、なめこだ。」
顔の描かれたサムシング。それをみてお子様の疑惑の目が一気に輝いた。
「すごい、おじさん。こんなに大きいの見たことない。」
キラキラと、それはもう羨望の眼差しだ。
言えない。これが「んふんふ」と声を出すかわいらしい生き物ではなく、ただの巨大なアレであるなど、口がさけても言えない。
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