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「現実って残酷だよね。勉強しなさい、働きなさい、結婚しなさい。最後は、死になさいかな」
忍び笑いがくすりともれる。
「面倒なことを全部忘れて、僕と一緒に行かないかい?この手を掴み返してくれたら、それだけでいい」
すっと、俺に向かって差し伸べられる腕。
男は逡巡する。
この少年の言うことは、共感できなくもない。
優れた才能も、恵まれた容姿も、何も持っていない自分。
先に待つ未来は、わかりきっている。
誰かのために、じゃなくて、自分のために生きる。
なんて、夢みたいな話だろう。
だけど、うまい話には裏がある。
突然飛び込んできたこいつに、黙って従う危険は冒せない。
いつだって俺は、この疑い深い性格に助けられて、ここまで平穏に過ごしてきたんだ。
つまんないやつ。
そう、後ろ指差されたとしても、俺は自分のルールで生きる。
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