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『アリスやアリス。ここに来るなと言ったではないか』
帽子屋はそう言ってカップに紅茶を注いだ。
草原に生えた木の下て行われるお茶会。
私はそのお茶会の参加者だ。
「別に、私だって来たくて来たわけじゃないわ」
ここに来るのは何年振りだろうか。
最後に来たのは小学生の頃だ。
もう二度と来ることはないと思っていたこの場所に。
『アリスやアリス。ここにいてはいけない。“時”に嫌われる前に出ていくんだ』
「出ていけたら苦労はしないんだけどね」
呆れたように私は笑った。
そして紅茶を啜る。
ここは“終わらないお茶会”の会場だ。
もし時間に嫌われたら最後、お茶会から抜け出せなくなる。
私だって早く逃げ出したい。
しかし、ここは私の思い通りにはならない場所だ。
ここは私の夢の中。
自分の意思ではどうにもならない。
『ならアリス。困ったときは銀時計を思い出すんだよ』
「はい?」
突然帽子屋がよく分からないことを言い始めた。
と言うより、脈絡がない。
『おっと、“時”が来たよ。さぁアリス、早く帰るんだ』
「帰るんだ、て言われても……。あれ?」
その時だった。
突然頭が真っ白になり、クラクラしてしたのは。
これは眠気。
夢の中で眠気に誘われる。
(ちょっと……これは……)
そう思った瞬間、辺りが真っ暗になった。
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